福耳落語とはいい題名だ。心がゆったり落ち着いて、和やかな気分になれそうだ。
著者の三宮さんは、4歳で視力を失ったSceanLessだが、落語大好きが高じて演芸全般に興味をお持ちのようだ。落語はもちろんナマで所作を含めてみたほうがいいに決まっているが、聞いただけでも十分面白い。そばもうどんも聞いているだけで、食べたくなるし、強情灸も熱いのを痩せ我慢している様子がよく判る。ただし、彼女はちょっと違う。テープで聞いただけだというから所作が全くわからないのだ。それを実際に体験して獲得していく。 さらには、太神楽、泥鰌までやってみて、手で触って理解しようとする。
古典と言われる多くのネタは歴史の中だ。 遣り手の苦労はここにあるが、聞き手は今までチャレンジすることはなかった。聞き手からのアプローチとして新しい道を示している。ここが分かっているから演者が皆協力するのだろう。