2009年3月10日火曜日

電車屋赤城

神奈川電鉄は川崎から三浦三崎まで神奈川を海沿いに走る私鉄だ。時代を築いた名車1000型もついに新型に取って代わられようとしている。整備技術のプロが腕を振るう車両整備の現場でも、車両交代が世代と風土を変えていく。技術はあっても無骨で無愛想な赤城と、職場の仲間、下請けの社長と元引きこもり、彼らを慕う女たちが、変化の直撃を受けながらも、仲間として対応していく、そうした物語だ。整備の現場の生き生きとした描写、技術を持つものが必要とされる職場。ひかえめだが、細かい心遣いと配慮のある人たち。もっと読んでいたい、この人たちと時間を共有したい、という気持ちがつのる。

読後に前の職場でもう30年近く前のことを思い出した。当時の検査や製造の現場には、設計者以上に装置を知っている検査の人や、細かい作業を正確で手際よくこなす人が多くいた。彼らはまさに「神の手」を持っていたが、謙虚で人間くさく、楽しい人たちだった。赤城が何人もいたのだ。しかし「デジタル化」が進展し、個別部品からIC・LSIへ、ハードからソフトへと「ものづくり」が変わる時だった。彼らの技術は「時代に合わない」とされ、管理部門や営業へと配置転換されて行き、継承されずに失われた。

がんばれ赤城、君のような人が活躍する時代こそが、よい時代だ。

技術はいつでも輝いていてほしいぞ:★★★(故障は「修理でなく取替え」で直すのでは、技術は尊ばれない。理科離れの原因もこれだ。技術を敬わない風潮は国を滅ぼすぞ)
藤谷! ライテクを教えてほしいぞ度:★★★(白バイを追い抜くのはすごい。バイクは最高だ。一緒にツーリングにいってくれ)