表紙がいい、静謐だが力強い。舟越桂の作品ということだ。悼むよりは秘めた意思という感じを受けるが。
亡くなった人を自分の胸に刻みつける「悼み」の旅をしている『静人』。妹はシングルマザーになろうとしていて、母親『巡子』は末期ガンながら最後の日まで力強く生きようとしている。トップ屋の『蒔野』と夫殺しの『倖世』は静人に惹かれていく。
感動的なのは巡子と夫の鷹彦。最後まで子供を思いやり、できることに感謝し、前向きに生きる。そして生まれてくる子が入れ替わりのように息を引き取る。巡子を支える夫。夫婦の理想型を見た。 最後まで父を許さなかった蒔野が最後には父を受け入れる、そして自分を取り戻す倖世も素晴らしい。静人がなぜ悼むのか最後までわからないままであったが、 周りの人間をまっすぐに活かす触媒であるのかもしれない。
静人よりも周りの人間が魅力的。 2,100円/定価1,619円。