2010年12月9日木曜日

罪深き海辺

東京から二時間の海に面した田舎町、隆盛だった漁業が衰え、財政は逼迫しているが、かつて、「殿様」と言われた大地主が住んでいた。突然の死のあと遺言によって遺産は全て市に寄付され、屋敷はヨットハーバーに変えられた。 
殿様の身寄りが殺されていたり、資産の処理に疑惑があるものの、表面上は平穏だった町に、「殿様の遺産相続人」らしい人間がやってくると、事件が起こる。殿様の検視をしたという刑事の不可解な死、地のヤクザと広域ヤクザの抗争、連続する関係者の死。
古い映画を見ているようだ。しなびた町の権力者同士の黒い結びつき。暴く正義漢は、子供の頃の町を去り都会暮らしで腕が立つ。目立たずボンクラなようで実際には敏腕の刑事と影で支える警察幹部。正義漢を慕う少年、仄かな思いを寄せる美人ママ。 安心して一気に読めて、爽快。
いいぞ 大沢在昌。 2,100円/定価1,700円。