2010年11月29日月曜日

犬身

タウン誌の編集者「房枝」は魂の半分は犬。犬を可愛がるように可愛がってもらいたい、という願望は、「梓」という犬好きの「犬」になることで叶えられる。ところが、梓は実の兄から性的虐待を受けていて、母親からは干渉されていながら、逃れることができないという厄介な環境で、心を閉ざして生きているのだった。
梓の飼い犬としての幸せは、だから長くは続かないが、最後には救われる。
房枝が犬の「フサ」に変わっていくところ、ドロドロした形のないものからだんだんと犬の実体が現れる遷移の様子がいい。読んでいると犬になるような気がする。
犬になってみたいとは思わないが、フサのような犬を飼いたいという気持ちになる。定価2,000円/楽しんだから2,200円まで出して買う。