2012年6月14日木曜日

笑い三年、泣き三月(木内昇)

演芸の本場浅草で一旗揚げようと旅回りの一座を抜けだした萬歳師「善造」が上野に降り立つ。戦災孤児となった「武雄」と出会い、浅草へ向かう。終戦直後の浅草で、復興とストリップの黎明を背景に、小さな劇場をめぐる人々の物語。行く抜くのが厳しい時代、騙し騙されが当たり前出会っても、善造は名前の通り無条件の愛情を武雄に注ぐ、ストリッパーのふう子は、善意で周囲を明るくする。ドラマチックな事が起こるわけでもなく、淡々と話は進むが、つい引きこまれ読み進んでしまう。ああ、いい人達がいるんだ、と優しい気持ちになれる。世の中が落ち着くに連れ、皆居場所を見つけてばらばらになる最後でしんみり。 定価1,600円。 ★★