祖母の葬儀で帰郷する柿崎信朗、一人息子の智郎を連れての30年ぶりの故郷だ。
今ではなんとなくの中流生活だが、30年前小学校4年だった信朗はノブと呼ばれ、鉱夫の息子で長屋住まい。悪ガキ5人組でいたずらし、遊び、そして、野球が生活の全てだ。金持ちと貧乏、ホワイトカラーとブルーカラーがはっきり分かれ、生活も住む所も区別があった頃の社会がくっきりと描かれる。父親は暴力的、母親は厳しく口やかましい、先生は怖く、ノブは半人前の扱いでも安定した生活。ああ、あの時代はそうだったなと懐かしい。
しかし、鉱山が傾くと生活基盤はあっという間に崩れる。外資経営者とその小人からの差別、金持ちからの露骨ないじめ。ガボちゃんの悲しい出来事も子供の力では為す術がない。やりきれない暗い話がじんわりと胸に沁みる。
人と会話ができない息子はいじめにあっての登校拒否であったことが明らかになる。最後のシーンがいい。ノブも智郎もがんばれ。