2011年3月31日木曜日

完黙

警察を支えているのは、エリートではなくて地道に捜査や日常の業務を行なっている多くの刑事や巡査だろう。長い警察人生では意気込みと違って地方や辺鄙な土地での業務を行う人間も多いはずだ。
スーパーの駐車場で襲われる定年間近の巡査部長、捜査一課をアル中で追われた刑事、殉職した父親の意思を継いだ新米女刑事、離婚した窓際警部補。登場人物は誰も華やかなライトの当たる人間ではないが、刑事としての気構えと強い意志を持っているようだ。たとえ警察の論理とは反していても、あるいは家族であっても、犯罪には敢然と立ち向かう、そんな警察を読みたい。
そんな意味で、捜査情報を漏らしてしまう女刑事はすっきりと読めなかった。この話を除けば、読後感はしっとり、警察人情話だ。