旅に出て句を詠む、吟行、つまり、優雅である。
しかし、この本に収容された2つの英国紀行は、氏の軽い筆致、軽妙な句を以てしても重苦しい。一つは湾岸戦争開戦と同じ時出会ったため、もう一回は氏の長年の友人の逝去を彼地で知ることになったからである。
紀行の伝統に則り、同行者はあだ名で呼ばれる。阿房列車のヒマラヤ山系、山口瞳のドスト氏である。今回の旅の友は「憂散」、何でも胡散臭いからだそうである。
英国は湾岸戦争の当事者であるから、ニュースは戦争一色、さぞや心配な事であっただろう。ちょうど今、原発爆発の危険が増す中に日本旅行をするようなものである。
もう一篇は、ジャパンフェスティバル1991のイベントへの参加、行く先々で皇太子殿下(明仁天皇)と逢うのが不思議。
読むとすぐに俳句ができそうな気がして、歳時記を買いたくなる、という不思議な本。