2012年7月13日金曜日

絵本・落語風土記(江國滋)

60年台後半に「随筆サンケイ」に連載、70年に青蛙房から刊行されたというから、40年以上前。落語の舞台を歩きめぐる。落語が江戸・東京の市井の文化であることがよく分かる。「百川」で常磐津の師匠が住んでいたのが「三光新道」、人形町駅と小伝馬町駅の間だ。「居残り佐平次」は「八ツ山橋」のそばの海辺。遠くは、「千住」に「王子」、落語会の住民の目で今の街を見る。土蔵相模の変貌に驚き、東京タワーの展望台で地球が丸いことを確認する。東京オリンピックで変わった当時の風景と確かに残っている落語の世界を結びつける。筆者が落語に造詣の深いだけでなく、当時はそこかしこに落語世界がのこっていたのだ。懐かしくてちょっと悲しい。定価680円 ★★★