2012年7月14日土曜日

機上の奇人たち(エリオット・ヘスター)

古い本を引っ張りだして読む。2002年発酵だから10年前。黒人フライトアテンダントの体験談。どの業界でもヘンなヒト、おかしな出来事はあるはずだが、閉ざされた機内、高度1万メートルという特殊環境が面白みを増幅させる。
体験しただけでも、電話を引っ張りだして元に戻せなくなった人、太り過ぎでシートベルトに延長ベルトを継ぎ足した人、マドリッド到着寸前のスペイン国歌の大合唱などがあった。絶対に機内はヒトをおかしくする何かがあるに違いない。 定価667円 ★

2012年7月13日金曜日

絵本・落語風土記(江國滋)

60年台後半に「随筆サンケイ」に連載、70年に青蛙房から刊行されたというから、40年以上前。落語の舞台を歩きめぐる。落語が江戸・東京の市井の文化であることがよく分かる。「百川」で常磐津の師匠が住んでいたのが「三光新道」、人形町駅と小伝馬町駅の間だ。「居残り佐平次」は「八ツ山橋」のそばの海辺。遠くは、「千住」に「王子」、落語会の住民の目で今の街を見る。土蔵相模の変貌に驚き、東京タワーの展望台で地球が丸いことを確認する。東京オリンピックで変わった当時の風景と確かに残っている落語の世界を結びつける。筆者が落語に造詣の深いだけでなく、当時はそこかしこに落語世界がのこっていたのだ。懐かしくてちょっと悲しい。定価680円 ★★★

2012年7月12日木曜日

電脳娼婦(森奈津子)

表紙に惹かれて借りだしたけど、エロ小説とは知らなかった。あの世と通信して小説のネタ探し、奴隷として買った男がじつは自分を殺した奴だった。いきなりの設定でガツンとやられる。電脳娼婦の驚きの設定にびっくり、そして結末で二度目の驚き。最期まで読んで、あとがきを読んでSFだったことを知る。SF原理主義者からは「SFではない」と言われるそうだが、SFの定義(きっとあるに違いない)なんてどうでもいいのに、楽しく読めればそれでOK。定価1 1,500円 ★★ 馬鹿馬鹿しいけど、面白い。続編待ってます。

2012年7月11日水曜日

神の柩(本岡類)

本岡類を読んだら面白くなかった、書評を見ると「神の柩」が一番らしいからチャレンジ。
編集スタジオを経営する「柏木」を訪ねてきた新聞記者時代の友人「江崎」は翌朝には溺死体で発見される。自殺と処理された江崎の死に関係しているらしい「理性の跳躍」を調べ始めた柏木には警告が届き妻も事故にあう。代表の高宮は公演先のアメリカで事故死し、江崎の取材をなぞるって高宮の故郷を訪れた柏木は一気に事件の真相に迫る。最後の柏木の脱出行と、すべての伏線が収束しカラリと解き明かされるのは、爽快。 定価 1,800円 ★★★ 一気読み、大満足

2012年7月10日火曜日

スプートニクの恋人(村上春樹)

いい題名だなぁ「スプートニク」、実際には「ビートニク」なのだが、どちらも素敵だ。
「すみれ」が「ミュウ」に恋したことから物語は始まる。「ぼく」とすみれはお互いほとんど唯一の理解し合える友人。すみれはミュウのもとで働くことになり、二人はイタリアからフランスへと買い付けの旅に出る。すみれは旅の終わりのギリシアの島での「消えてしまう」。ミュウに呼び出されたぼくは島まで向かうが、探し出せぬまま帰国する。すべてがフワフワとして存在感がなく夢かであるように進行する。雲の中でウトウトしているような半覚醒の心地よさ。それぞれが衛星に乗って宇宙軌道にいるように、近づいたり、離れたりしながら遠くをさまよっているのが気持ちいい。定価 1,600円。★★★

2012年7月9日月曜日

中国でお尻を手術(近藤雄生)

昆明で内視鏡手術でポリープを取るという大変な経験で始まる。内視鏡が壊れて20日待つ、内視鏡はすんなり入らず、ポリープとれたら皆で「好」の掛け声、とか、術後の最初の食事が普通食以上の油ギトギト青椒肉絲、驚きの手術記。でも面白いのはここまで。
定職無いまま夫婦でプラプラ海外暮らし、タイから雲南に入って、学校入って、チベット旅行して、上海に引越し。30近くで物書きになれるか心配で不安、とイジイジ、じっとり綴られる。もっと知りたいチベットや、昆明生活はさらっとし過ぎで物足りない。 定価 1,600円 ★もっと面白い体験して、オオッという驚きを知らせてくれ。

2012年7月8日日曜日

マン島物語(森雅裕)

マン島T.Tといえば本田が世界のホンダとなった1961年のレースで有名。その後もスズキ、ヤマハが優勝するなど、高度成長期の躍進の象徴でもあった。しか、しあまりに危険な公道レースは1977からWGPから外され市販車ベースのレースになった。そんな時代、ジョイ・ダンロップがホンダで連勝していた時代の物語。
自分のマシンを壊してしまい、ドカティチームで走る事になった三葉邦彦。撮影で訪れていた元アイドルの真弓がチームの一員として加わる。好いていながら意地の張り合いをする二人、彼らを取り持とうとする小学生のニコラを軸に話は進む。シニカルな文体になれるまではちょっと大変。だが、レースになると一点、適格でカチッとした文体で邦彦の走りが伝わる。危機を乗り越え、最後に優勝すると思われた邦彦。 だが、文体は難しい。慣れたら気持ちがいいのだが、例えば「体格はいい娘だった。それでも女であることを忘れさせるにはほど遠い」。どういう意味だろう。
定価1,450円 ★★ (最後はもっともっとハッピーにして欲しいけど)