「温泉紀行」というジャンルが日本にはある。横尾忠則の「温泉紀行」は、「絵、すなわち紀行絵」が主役であることがユニーク。
温泉に浸かり、町を歩き、あるいは夢の中から、作者は絵のテーマを得る。筆者は『絵のイメージは考えるのではなく、向こうからやってくる』というが、主題を絵から読み取ることの出来ない一般人には「文」の説明があって初めて旅の追体験も出来る。文は絵の単なる解説ではなく、「絵+文」で作品が完成しているのだ。
絵はどれもがすばらしいが、霊魂が浮かぶ「修善寺の湯」(修善寺温泉)と、幻想的な「金の湯」(下呂温泉)が好きだ。
雑誌5l (ファイブエル)に連載したもの。なんとWebでは全文が読めてしまうが、「紀行絵」のない温泉主義は価値半減。
温泉行きたいぞ: ★★☆ (泊まるのはどれも超一流旅館、行ってみたいが難しい)。
温泉名物は多いが: ★★★ (作者はどこでも、土地のソフトクリームとぜんざいを食べ歩く。酒と食事なら誰でも思いつくが、さすがの発想。でも試したいとは思わないが)