芳恵は25歳の向島芸者。高校卒業と同時に母の後をついで芸者となり、芸の立つ若手三味線弾きとして売り出し中。向島で、芸に専心していた25歳の芳恵は、流れに身を任せていいのかと思い悩み、自身の行く末を案じる普通の若者であった。 しかし、30も年の違う黒川を得て、芳恵は古いしきたりと自我にうまく折り合いをつけ、しなやかに成長していく。
向島の情景と芸者の日常が芳恵を通してきめ細かく記述され、料亭での芸者遊びの様子が鮮やかに浮かび上がる。ここでは芸の苦労や諍いは一切が隠され、粋筋の旦那衆と包容力のある女将が、黒川を支えて、芸者を育てていく情景が愛情を持って描かれる。芳恵はこの後、どうやって成長していくのか、向島三部作の第一編であるとのこと、続編を読みたい。
作者は花街 向島で育ち、母は芸者であったという。しっとりとしかし歯切れのある文体も読んでいて心地よい。
芸者遊び: ★★☆(旦那衆がいて、芸者が育つ。 花柳界のシステムもよくわかる)
向島: ★★★(といえば、アサヒビール。隅田川の花見、言問い団子、風情はあるけど、、、)