明治初年の東京が舞台。実之は東大生であった兄の死を不審に思い、一高受験にかこつけて上京する。兄の「三年坂で転んだ」のメッセージをキーに「三年坂」を探し回る。一方予備校講師の「鍍金先生」も大火の要因探りをしている。途中までは「謎」画なんであるかも不明だが、十分面白い。旧武士の没落と官僚階級と知識人の出現、あるいは、実之の成長物語、旧江戸の地名探索など、多様な読み方が可能である。
謎は以外な結末で終わるが、これも良しで、後味も悪くない。
「乱歩賞受賞作」は講談社文庫でずいぶんと読んだものだ。最近は受賞作を追いかけることもなくなっていたが、読み応えのある作品だった。29回「写楽殺人事件」が既読の最新だから、もう20年以上も前に読んだきりだ。読んでみると確かに面白い。