2012年5月12日土曜日

落語論(堀井憲一郎)

落語は都市空間で共通の意識と価値観を共有する観客に、寄席という場で、話術の技術を持った演者が擬似世界を作るものである。だから寄席で直に聞くことが必要で、空間を旨く作る演者がうまい落語家である。そこではサゲは重要ではなく、ストーリーも内容もどうでもいい、フレーズ、セリフに意味があるのだと解く。たしかに、啖呵の気持ちよさ、言い回し、セリフが心地良い。談志のCDで可樂の「偉かぁ無い」と言うフレーズが好きだと言っていたが、落語を聴きこむというのはこうしたフレーズを見つけることなのだろう。だからこそ、落語家はオリジナルのフレーズを大切にするのだろうし、くすぐりを工夫するのだろう。 落語は歌であるというのは至言だ。同じ歌でも気持のいい歌い方があるし、何度も聞きたくなる。
初めて聞き手からの落語論ということに価値アリ。★★ 定価720円