2011年3月31日木曜日

完黙

警察を支えているのは、エリートではなくて地道に捜査や日常の業務を行なっている多くの刑事や巡査だろう。長い警察人生では意気込みと違って地方や辺鄙な土地での業務を行う人間も多いはずだ。
スーパーの駐車場で襲われる定年間近の巡査部長、捜査一課をアル中で追われた刑事、殉職した父親の意思を継いだ新米女刑事、離婚した窓際警部補。登場人物は誰も華やかなライトの当たる人間ではないが、刑事としての気構えと強い意志を持っているようだ。たとえ警察の論理とは反していても、あるいは家族であっても、犯罪には敢然と立ち向かう、そんな警察を読みたい。
そんな意味で、捜査情報を漏らしてしまう女刑事はすっきりと読めなかった。この話を除けば、読後感はしっとり、警察人情話だ。

2011年3月30日水曜日

虎屋の羊羹

虎屋の羊羹は立派で重い。その分値段も高いけど、たっぷりの砂糖が入っていていまどきの甘さひかえめとは対極、だから旨い。
とは言っても太棹は2kgもあるし、とても食べきれない。小型羊羹は50gで食べきれるし、種類もたくさんで楽しい。
買ったのはミッドタウンの地下にある直営店。
羊羹の代名詞で小倉の切り口がきれいな『夜の梅』、黒砂糖の『おもかげ』、抹茶入の『新緑』、小型だけの『はちみつ』。成田と羽田でしか売っていない『空の旅』もいれての5本入り。
頼めば組み合わせを買えてくれるのも嬉しい。 

2011年3月29日火曜日

つけめん TETSU 千駄木本店


中野に青葉ができた頃だからもう15年も前から、つけ麺といえば「青葉」。 屋台のような店で、ご主人が修行僧のように黙々と麺をゆで、チャーシューを切っていたのが懐かしい。 
今日は「TETSU」。千駄木には何回も行っているのにこんな大人気の店があるとは知らなかった。頼んだのはつけ麺(750円)+大盛(50円)。つけ汁は豚+魚に鰹節粉も混ぜているようだ。濃厚だけれとまろやか、塩っぱさが全くないのがいい。
麺は極太で固めだから、歯ごたえたっぷり、ラーメンとい言うよりパスタだなぁ。この麺が良くスープに絡むから、旨味濃厚スープがジョロリと吸い込まれる。メンマもいいし、チャーシューも脂があってうまい。特製は卵とチャーシュー増量だからこっちのほうが良かったか。
ここは食べ終わっても楽しみがある。スープで割ってくれるのはどこにでもあるが、さらに焼き石で再加熱できるのだ。激しく沸騰するほどで、ちょっと熱くなりすぎた。

2011年3月28日月曜日

木を切る人

枝打ちをしているの見つけた。のこぎりを持って木に登り、枝をきれいに処理している。一階の屋根のほどの高さだろうから4mはあるだろう。 ハシゴを立てかけたり、最近は、高所作業車での作業を見かけるのだが、気に登る、っていうのはかっこいいね。
4月10日の選挙ポスター掲示板も準備が出来ている。4月1日が告示だから、金曜までは白いままだ。 

2011年3月27日日曜日

万満寺 春の大祭

馬橋駅のそばの万満寺。立派な山門が、快晴の空に映えている。
重文の金剛力士立像で有名だ。運慶作と伝わっていて、正月と春秋の大祭にはご開帳される。疱瘡除けの願掛けと合わせて股をくぐらせたのが始まり、ということだから江戸時代から伝わっているわけだ。
年に3回とはいえ、重文を見て、股までくぐれるのだから、ありがたいものだ。 

2011年3月26日土曜日

計画停電と桜まつり

彼岸を過ぎても寒い日が続くし、交差点も街灯が消されているから、今年は春の来るのが遅く感じる。水戸街道の大きな交差点も照明が消されることになったから、夜は暗い。
外国に行くと照明が暗いことにびっくりし、また、夜飛行機から見下ろした日本があまりに明るいことに驚く。 何十年か前に戻ったような気がするが、それでも十分な明るさだ。
近所では常盤平の桜並木が有名で、日本の道100選やお花見の名所として有名だが、この交差点の通りも桜並木だ。
3月末には満開の桜が道に張り出すから、バイクで走ると何百メーターも続く桜のアーチが明るく、華やかで素晴らしい。
今年はまだつぼみが小さく、華が咲くのはもうしばらくかかりそうだ。あと2週間くらい4月10日ころには満開ではなかろうか。
ここでも震災でいち早く桜まつりは自粛だ。日程通りだと今年は桜はなかったかも知れない。もうすぐ咲くのだから、今年は静かに眺めることだ。

2011年3月25日金曜日

東京かわら版 23年4月号

本日到着である。定期購読の「東京かわら版」。いつもより早いなぁ、と思ったけどもう25日。震災前、後で語られるようになるに違いない2011年3月。 その震災後の最初の「かわら版」。
演芸会情報には、「地震の影響を考慮して中止」「計画停電地域のためやむを得ず中止」の落語会がある。365日休みがないと思っていた寄席も休んだし、震災は演芸会にも影響を与えている。
4月号には「寄席演芸年鑑」が同梱されている。2010年の出来事では「志ん五師」の逝去。迫力満点の与太郎落語が懐かしい。世代はこうして変わっていくんだなぁ。
川柳師と歌之助師が共に鈴本と末広で主任である。4月は寄席に行けるくらいの余裕はできるだろうか。

2011年3月24日木曜日

インディアンカレー (大阪で食べる)

大阪でカレーといえば「難波 自由軒」と思っていたらから、ずいぶん前に行ったことがある。カレールウがご飯と混ぜられていて、真ん中に生卵が乗っている有名なやつだ。「名物に美味いものなし」の典型と思ったものだ。
阪急三番街の地下に降りてみたら、昼前なのに混み合っている店がある。「インディアンカレー」とはどこかで聞いたことがある。で、注文。
テキパキした接客、席に着くと5秒でカレーが出てくる。ピクルスが別皿になっているのは、珍しい。一口目は甘い、玉葱をじっくり炒めたのだろうな、ライスはすごく固めだが、ルーにあってうまいなあ。食べ進むにつれて辛みがじんわり、と効いてくる。知らない間に汗が出てくる。そうなるともう甘味は感じず、付け合せのピクルスが辛味を中和して旨い。ピクルス大盛りがあるのも納得である。
食べて納得、大盛りでお腹も満足。旨いから名物になって、店も繁盛するのだな。 メニューには卵もあった、大阪カレーはこれがないとダメなのだろうか? 大阪以外では見たことがないなぁ。

2011年3月23日水曜日

無間地獄


桐生は富樫組のナンバー2として、闇金融を仕切っている。法外な利息と命を取ることすら厭わない過酷な取立てが身上であり、金と力で今の地位を獲得してきた。エステのキャッチセールスの玉城は、端正な容姿でナンバーワンセールス二の仕上がり、、女はすべて道具、金が命である。
桐生が、エステ経営者の借金を玉城に背負わせたことで、二人には接点ができる。一方富樫組でのライバルは、桐生の追い落としを狙い、三つ巴の追い込みが始まる。
独立して起こる事件は相互に関連していて、全ては桐生の陰惨な生い立ちが元となっていることが明らかになる。事件の描写は過激で凄惨だが、徐々に解き明かされる桐生の過去が謎解きともなり、最後まで読者を引っ張る。刺激たっぷり、読み応えアリ。



2011年3月22日火曜日

バイク旅行 春到来第1号

バッテリーとタイヤを前後とも替えて、春のツーリングに備えたが、しばらくは遠出はできそうもない。
買い逃していた「OutRider」でも買おうかと本屋によったら新しいバイク雑誌を発見。春らしい表紙とのんびりした名前に惹かれて即購入。
東京、大阪・京都、名古屋起点のツーリングコースが13。その他読者のすすめる日帰りツーリングが4本。行き先は有名処がおおいから、目新しさはないけれど。 「全国のバイクイベント」は、小ネタならがありそうでなかった好企画。残念ながら、地震の影響で延期や中止も結構ありそうだ。 
「東京のパワースポット巡り」、全てにバイク駐車可能と書いてあるから、チャレンジできそうだ。十社回って40kmなら、マラソンでもOKそうだな。

2011年3月21日月曜日

英国こんなとき旅日記

旅に出て句を詠む、吟行、つまり、優雅である。
しかし、この本に収容された2つの英国紀行は、氏の軽い筆致、軽妙な句を以てしても重苦しい。一つは湾岸戦争開戦と同じ時出会ったため、もう一回は氏の長年の友人の逝去を彼地で知ることになったからである。 
紀行の伝統に則り、同行者はあだ名で呼ばれる。阿房列車のヒマラヤ山系、山口瞳のドスト氏である。今回の旅の友は「憂散」、何でも胡散臭いからだそうである。
英国は湾岸戦争の当事者であるから、ニュースは戦争一色、さぞや心配な事であっただろう。ちょうど今、原発爆発の危険が増す中に日本旅行をするようなものである。
もう一篇は、ジャパンフェスティバル1991のイベントへの参加、行く先々で皇太子殿下(明仁天皇)と逢うのが不思議。
読むとすぐに俳句ができそうな気がして、歳時記を買いたくなる、という不思議な本。

2011年3月20日日曜日

つるりとせ

「山上たつひこ」といえば、「がきデカ」。
少年チャンピオンで好きだったのは、「750ライダー」と「がきデカ」、「ブラックジャック」も良かったなぁ、
山上先生が、小説家になっているとは知らなかった。名前に惹かれて借り出しあ。
淡々とした語り口だが、内容は奇妙で不思議かつ怖いが、どこか柔らかくて懐かしい。いとこい漫才を聞いているようなのだ。異常なのだが普通、普通のようでズレている。簡単に、済ませればいいところを、こだわってエスカレートさせることが周囲に歪と混乱を起こす。ズレがたまらなくおかしい。
読んでいて、山上先生は大阪出身?と思ったらやっぱり大阪育ち。納得。

2011年3月19日土曜日

しちりん (OysterBarでのおなじみを発見)

地震と津波、原発事故は、日本沈没を想起させる。まだまだ余震もあるけれど、気分転換にと食事に出かける。7時すぎに行ってみたら、満員。 
調理も味付けも自己責任。炭火で焼くからまさに日本のバーベキューだ。大きい貝は「ホンビノス」。市川産ということだから地元産だ。
この貝、初めての発見は1998年というから10年ほど前というか羅つい最近だ。
今回は大きいから焼いて食べたが、調べてみたら、小さいものはLittleneck。ちょっと大きくなってChrrystone。なんだこれなら、昔良くボストンで生食してた貝じゃないか。 OysterBarで牡蠣と一緒に出てきてたなぁ。 懐かしい。

2011年3月18日金曜日

落語家の了見

題名がいいよね。 「考え方」、「心得」でなくて、「了見」。落語家には「了見」がよく似合う。
当代人気の落語家30人へのインタビュー。落語家以上の「志の輔」で初めて羅落語そのものの「川柳」で終わる並びもいい。「落語だいすき」が行間から伝わってくるのがいい、優しくホンワカした気分になる事請け合い。
影の主役は「志ん朝」。今落語会を背負っている師匠の修行時代の憧れ、太陽ともいうべき存在だったのだろう。
残念なのは大御所がないこと。家元は本が多いからいいようなものの、米丸、小三治なんかは取り上げて欲しかったなぁ。
読むと落語が聞きたくなる。 

2011年3月17日木曜日

沈底魚

乱歩賞受賞作に惹かれて読む。
沈底魚とはスパイ、ただし指示があるまで半年でも一般市民として暮らすのがつとめ。大物政治家が中国スパイだという亡命外交官証言を、外事ニ課の刑事不破は、相棒の若林と一緒に追うことになる。 大学同級生の行方不明、相棒の不可解な行動、エリート理事官凸井の思わせぶりな指示、公安内部の反目と主導権争い、そもそも証言は真実か、と情報も状況も輻輳、二転三転する中で、不破はじわりと真相に近づく。
何のために国を守るのか、公安の意味とは何か、と余計なことを考えてしまうのは、退役外交官の独りよがりのためか。
もっと長いページ数にじっくり書き込んでもらったらもっと面白くなっただろう。最後まで不破に感情移入できなかったのが、残念。 乱歩賞としては面白く読んだけど。

2011年3月16日水曜日

農心 ククス

韓国素麺、という感じか? 
韓国だって辛くないもの、さっぱりしたものだって沢山ある(はず)。これはさっぱりして旨い。出汁もいい味。 
韓国からの地震見舞いのパッケージで貰った物。 すぐに食べられるものを送ってもらって、大変ありがたい。

2011年3月15日火曜日

高麗人参グミ

海外では原発の爆発と放射能汚染がトップニュース。 防護服に身を包んだ刺激的な写真が一面を飾る。 心配して韓国からおくってきたのが、高麗人参グミ。
ニンジンエキスを封じ込めたグミで、滋養強壮の効果あり、というわけである。放射能に聞くのかどうかは分からないけど。
パッケージを開けなくてもそれとわかる土臭い人参の香り。開ければもっと強烈。たっぷりの甘味で苦味や辛味はなく、意外と旨い。臭いが気にならなければ結構いけるぞ。 毎日食べれば元気になるだろうが、カロリーとりすぎの心配があるかな。

2011年3月10日木曜日

落語こてんパン

キョンキョンこと「喬太郎」が語る落語解説(というべきだろう)。 
さすが当代の若手ナンバーワン。古典から新作まで守備範囲も広いし、ラジオ番組まで持っているという売れっ子は書いてもうまい。
内容自体はそんなに感心するほどでもなかったけど、手の内さらけ出し型の語りはキョンキョンならでは。カバーする演目も幅広い。
可笑し味とシリアスに、書くことの苦労、呻吟が降りかけられて、楽しめる。落語というよりは、ラジオを聞いているようだね。速記でないから当たり前か。 

2011年3月9日水曜日

妖しの上野

上野やアメ横は不思議なところだ。東北の玄関は新幹線開通で東京に移ってしまったけど、異次元への玄関は健在だ。
光輪亡き後の寂れた上野バイク街は、日の当たらない高速の下が似合うようになった。ニコイチ、サンコイチが路地から出てくるような気がする。
そして、アメ横にはラバーマスクで有名な「上野屋」がある。いやらしくデフォルメされた顔はモデルの内面をえぐり出す。
丸井カードのATMはもっとすごい。生首が乗ってるATMなんて、入ったら妖しの世界へ連れていかれそうである。 新宿マルイはひたすら明るいけれど、上野マルイは、ドロリとした力に覆われているようである。

2011年3月8日火曜日

垂里冴子のお見合いと推理

長女の冴子はたくさんいるだろうが、苗字が「すいり」はちょっとあるまい。この冴子さん、黄八丈を着付けている本好きだが、ちょっと縁遠くてお見合10回以上のベテラン。なぜか、お見合では必ず事件が起こるという不思議。そしてメガネを外してキラリと目を光らせて事件を解決してしまう。名前のとおり推理が冴える。
脇役も楽しい、推理一家でひとりだけ空っぽの次女は「空」は、はじけた狂言回し。高校生の弟は「推理狂」の垂理京一、冴子姉さんが大好きだ。叔母は仲人マニアで、冴子への縁談の供給元だ。
意外な探偵といえば、都筑道夫の「泡姫シルビア」シリーズが第一、ベッドの上で事件を解決というのがすごい。山口雅也は、お見合探偵という新しいジャンルの開拓者だから、第二位か。続編もあるから全編読破のつもり。

2011年3月7日月曜日

うそうそ

若だんなが、箱根に養生にでるという。湯治で湯あたたりし、どこへも行けずで寝ながら事件を解決するのかと思ったら、大違い。若だんながさらわれたり、天狗に襲わ、村人に追いかけられる、という冒険譚で、ことがあると寝てしまう今までの若だんなとは大違い。
頼みの「仁吉」と「佐助」はいないし、おなじみの妖も鳴家だけ。その代わりに雲助頭の「新龍」がいい味だしてる。
せっかくの箱根だが、地の利は生かされていない、若だんな誘拐と、天狗襲撃といくつかの物語が絡みあうが、上手く説明されていないからちょっと中途半端かな。 寝てばかりの若だんなの旅だから、もっと楽しく賑やかであって欲しかったなぁ。

2011年3月6日日曜日

タチコギ

祖母の葬儀で帰郷する柿崎信朗、一人息子の智郎を連れての30年ぶりの故郷だ。
今ではなんとなくの中流生活だが、30年前小学校4年だった信朗はノブと呼ばれ、鉱夫の息子で長屋住まい。悪ガキ5人組でいたずらし、遊び、そして、野球が生活の全てだ。金持ちと貧乏、ホワイトカラーとブルーカラーがはっきり分かれ、生活も住む所も区別があった頃の社会がくっきりと描かれる。父親は暴力的、母親は厳しく口やかましい、先生は怖く、ノブは半人前の扱いでも安定した生活。ああ、あの時代はそうだったなと懐かしい。
しかし、鉱山が傾くと生活基盤はあっという間に崩れる。外資経営者とその小人からの差別、金持ちからの露骨ないじめ。ガボちゃんの悲しい出来事も子供の力では為す術がない。やりきれない暗い話がじんわりと胸に沁みる。
人と会話ができない息子はいじめにあっての登校拒否であったことが明らかになる。最後のシーンがいい。ノブも智郎もがんばれ。

2011年3月5日土曜日

サウスポーキラー

最高学府を出て留学経験ありという普通の職業なら超エリートの沢村航は、球界ナンバーワンの人気球団の左腕投手。 監督はひらめき采配で成績低迷、コーチは旧態依然、二世の七光オーのは野球音痴で体面重視。頭脳派で科学的な沢村は球団の中で浮いた存在。
突然の暴行と八百長の告発メールで、沢村はマスコミに糾弾され、二軍に落とされてしまうが、これは全く見に覚えのないこと。美人女優の助けを借りて真相究明に乗り出す。
クールで孤独、セリフもハードボイルドな沢村、ヒロインの黒沢美鈴は美人だが芽の出ない女優、クセのある長老記者と、登場人物も魅力的。
謎解きとしてはちょっと薄味だけれど、投球の駆け引きと投手心理の描写が面白く、定石通りの主役とヒロイン、脇役で、安心して物語に浸ってイッキ読み。

2011年3月4日金曜日

小説 古今亭志ん朝 芸は命、恋も命


明るくて華やかで艶のある志ん朝落語は大好きだ。朝日名人会の志ん朝シリーズは若い頃の録音だから、勢いと張りもあっていつも大切に聞いている。
若い頃はすごく売れていたから映画もラジオ・テレビでも人気だった。その頃の話から始まる、ヤクザの養女との短い恋、パリでの逢瀬、そして芸の師匠の三木のり平とのかかわり。協会分裂騒動での兄馬生とのやり取りなど、全ては生々しい。
筆者の伯楽は先代馬生の弟子で志ん朝の親友ということ。だから彼の色恋も、芸の苦労も良く知っていたのだろう。
でも、こうした本は読みたくなかった、志ん朝だって色恋があるだろうが、亡くなってからなんでこんな暴露本のようなものを書いたのだろう。小説とつければOKなのだろうか、後味悪し。

2011年3月3日木曜日

東京島

無人島に流れ着いた31人の男と1人の女。女を奪い合うでもなく、男達はそれぞれこじんまりとまとまって生活する。 女は中年、魅力的でもなく普通のおばさんだが、女の武器をそれなりに活かして強いものに着いたり、媚びたりして比較的マシな生活を送る。
中国人や、フィリピンの女たちが流れ着き、島の住民は増えるが、抗争が起こるわけでもない。脱出の思いは同じだが、バイタリティのある中国人と、おとなしい日本人、上手く立ちまわる中年女。
ビックリするような事件はなく、たしかに日本人が流れ着いたらこうなるであろうと思わせる展開。
日本人てこんなモノなのかな、ビックリせずに納得した一冊。

2011年3月2日水曜日

寄席の人たち 現代寄席人物列伝

寄席に関わる人達、席亭、下座、寄席文字、そしてもちろん芸人達、噺家、手品師、漫才、三味線漫談、講釈師、紙切りに太神楽と色物も合わせて10人へのインタビュー。
寄席はチーム芸、だから、トリだけを目当てにしないで、退屈な演者にも眠らせるのも芸の内と心得て、ゆったり身をまかせるのがコツ。席はそれほどゆったりしていないから、窮屈を辛抱するのも寄席の楽しみ。
この本を読んでいけばもっと楽しい。芸人だけでなく、周りの人達も皆が寄席好き、演芸好きなのが、伝わってくる。 琴調の講談一筋もすごいし、柳貴家小雪の芸の仕込まれ方も普通ではない。
また、寄席に行こう。

2011年3月1日火曜日

立川流鎖国論

題名に釣られて手にとってしまう。 立川流は鎖国? たしかにこれは読んで確かめねばならない。寄席には出てないし、美学と論は家元独自だし、イリュージョンなんて三遊亭でも林家でも似つかわしくない。なるほど鎖国とは言い得て妙である。 さすが志らく、落語も旨いが、筆も立つ。
そう思って思わず買ってしまった立川流のファンは多いはずだ。 
が、この本はちょっと薄味。どこかで読んだようなものばかりだから、「以前よんでたかな?」と心配になる。読者を心配させてはいけない。
書きためた短文をまとめて一冊に仕立て上げたのだろう、「論」というほどまとまっていないし、一冊としての工夫もない寄せ集め本。題名がいいだけにちょっと残念。