2010年2月22日月曜日

権太楼の大落語論

柳家権太楼の落語論。生い立ちから入門まで、アナウンサーの塚越孝がうまく合いの手を入れるから、スルスル読めるが、内容は重厚で、当代一の講座数をこなす師ならでは落語論は重みがある。
営業と高座で鍛えた芸への自信、寄席が落語家を作る、というのは、はやりの独演会偏重、立川流の対極にある。五目落語は面白いが独演会だけで出来ること、風間杜夫や高田文夫の落語も別のフィールドでのことと切り捨てる。落語会蜘蛛の糸論、入門は丁半博打という自己責任論、枝雀蹴られて弱る論、など強烈な自信と芸の肯定があるからこそだろう。平成の聞き手ナンバーワンの堀井憲一郎が2008年ナンバー4とした所以である。三太郎の真打直前の破門騒動の記述はいかにも唐突で暗示的。 出版が2006年3月末、破門が5月6日、笑い話として載せたら現実になってしまった、ということか。
巻末の詳細な注も初心者に親切。初心者が手にとる確率は非常に低いが。 1,200円/定価1,800円