2012年6月20日水曜日

死者の鼓動(山田宗樹)

心臓移植のレシピエント「洋子」とドナー「玲香」は同じ高校の親友同士。前半では重篤な病を持つ父母の苦悩と、急激な娘の変わりように気持ちが揺れ動くドナーの母親が対比して描かれる。快方に向かっていたレシピエントの容態急変と脳死、突然現れ臓器提供に強硬に反対する父親の都合の良すぎる焼死、功をはやる助教授の移植準備の勇み足など、移植の現場での事故や軋轢をはねのけて移植は成功するも、提出と移植がレシピエントの父親だったことなど疑惑が発生。手術の描写は圧巻、ビジュアルと緊迫感でまさに立ち会っているような緊張感がある。

筆者の腕力は親友間の移植という特殊条件を設定して、移植を取り巻く課題をすべて入れこみ、圧倒的な手術描写に、医学ミステリーと一応破綻なく盛りだくさんの内容をまとめあげた。反面手術後の謎解き部分は冗長でキレがないし、手術描写も全体を通してみると浮いている感がある。夢中で読み切るも後で若干の違和感あり。 定価1,8001円 ★★