2009年3月22日日曜日

昭和の爆笑王 林家三平 傑作集

林家三平のネタ帳やメモに残された小咄と、高座、真打披露速記をまとめたもの。読んでいると、身振り・手振り・歌まで総動員しての高座の様子が目に浮かんでくる。高度成長のもと、将来に希望をもてた時代が背景にあったのであろう。三平の小咄には、社会のひずみや社会資本の不備を笑い飛ばす勢いがあった。
ワイドショーで政治家自体が道化を演じる現在では、「お笑い」は、「私小説的」「身の回り的」であり、「若者」または「お年寄り」限定であり、広く共感を呼ぶ芸が出る余地もない。
三平の芸で残念なのはCDが驚くほど少ないことだ。映像も豊富に残っているだろうから、ぜひ発売してほしい。この本を読んでも、実際に見ていない人間には面白みの半分も伝わらないであろう。
勢いのあった時代が感じられるぞ: ★★☆(本人がカミカゼタレントといわれたぐらいだから、勢いがある。ただし、昭和40年前半のテレビや高座を見た人限定)
努力の人はよくわかっている: ☆☆☆(三平が努力の人であり、父であった師匠正蔵の死後の苦労や、二つ目で売れたことでの落語会の厳し対応などは、よく言われることである。この本ではそうした人間面をハイライトせずに、傑作集に徹したほうがよかったのではないか。)