2009年3月13日金曜日

日本を二流IT国家にしないための十四カ条

著者は前佐賀市長として電子自治体の推進を行い一年でITシステムの改革を完遂させた。韓国視察の衝撃から始まり、改革の目標策定、実行、そして今後について記述したものである。残念ながら2005年の二期目の選挙で著者が敗れたため、今後については「こうする予定」である。 
金のかかる割には非効率で遅れた電子政府の原因を、自治体のITスキル、Tゼネコン、縦割り業務と見破り、先進のソウル市を範としてトップダウンでIT化を実現した。
やっったは当たり前のことである。レガシーシステムをサーバにダウンサイズ、エンタープライズアーキテクチャの手法で業務を規定し、オープンシステムとして構築する。著者は「EA: エンタープライズアーキテクチャ」の用語は使っていないが、やろうとしてことはまさにこれであり、「中途半端となった」と語る要因もEAの欠如でもあると語っている。この当たり前がトップダウンでしか実行できないことに自治体の問題の深さがある。
相互に融通できないデータ(顧客や発注など)、IT部門の力のなさ、ITゼネコンへの丸投げなど。床も似たり寄ったりであろう。日本のIT投資はUSに比べて圧倒的に少ない。売り上げ比率で同じ程度であるのは金融だけである。しかも、投資の過半が維持管理に費やされ、新規業務にはほとんど金が回っていないことが現実である。これでは、日本と他国との差は開くばかりである。
前市長は二期目で敗れてしまう。ITシステムこそが少子高齢化による税収・職員減とサービスの高度化・高負担を解決できる唯一の手段、地方再生の鍵であるにもかかわらずだ。
鉄道駅ができて水運に頼っていた都市が衰退したとおなじことが早晩起こるであろう。 空港と道路で工場誘致ができた時代は終わった。ITこそが時間と場所のハンデをなくし、頭脳を誘致し新しい産業を興すキーであるのに。 自治体の病の根は深い。