2011年6月9日木曜日

銭湯の女神 (星野博美)

香港返還を香港に住んで見届け、日本に帰ってきてから3年。ファミレスを執筆場所として、身辺、世相を切り取ったエッセイ。時代は2002-3年くらいのだろう。
ユニークなのは、当事者と異国人の目の二つで見ていること。プラダを買った友人の「一応、プラダ」に対して「早く気付かなくてごめん」と謝る日本の若い女。プラダを見て「本物じゃないよね」「当たり前」という会話をする筆者と香港の友人。友人に拒否されないための空虚な会話と、儚い関係。作者の切り取った風景は10年を経てさらに浸透している。
作者が見るのは身の回りのささいな事ばかり、銭湯の富士山の絵であったり、高齢者に注意という看板。小さか事から日本の風俗をググっとえぐる筆力に圧倒されてあっという間に読了。 ★★☆