2009年4月4日土曜日

40年前の東京

写真家 春日昌昭の撮りためた昭和38年から41年の東京の写真集。新旧混在による混沌、破壊と創造、エネルギーと勢い、が飛び出してくる。
粒子が粗くコントラストが強調された写真は、この時代を切り取るにぴったりだ。当時の東京には芸術家の想像力を刺激する「棘」がいたるところにあった。まだ発色のよくなかった、あるいは三色刷りの映画ポスター、泥絵の具の看板が持っていた猥雑な力、意思と諦観が共存する表情が、春日の写真に確実にしっかりと定着されている。
無秩序で管理されないまま成長した東京は、オリンピックに向けて、再開発、整頓されていき、ぴかぴかにきれいに磨かれた。だが、都市としてのエネルギーは失ったのだろう。この時代がいいかといわれると答えはNOだ、ただしエネルギーは感じ取りたい。この写真集がこれに応えてくれる。
もう一度戻りたい: ★★★ (新しい始まり、未来はもっとよくなる、と皆が信じていたからこそ、未整備で矛盾だらけのなかに勢いと希望が見えるのだ)
高品質、秩序はどこにあった: ★★★(どこにもない、都市がきれいになるにつれ、よくなったのだ、すべてはこの時代のエネルギーが生み出したのだ。そして今また失われようとしている)