2009年4月16日木曜日

コンビニ・ララバイ

子供をなくした堀は、妻と二人でコンビニを始めるが、その妻も子供の後を追うように事故で死んでしまう。 堀はそれでもコンビニを続けるが、魂の抜けたようで経営にも実が入らないままである。息子の事故の原因が自分にあると悩む堀は、妻の事故死が自殺ではないかと考えているからだ。
しかし、堀には人を引き寄せる力があるようだ。悩みや葛藤を持つ人間には、堀が心の隙間をふさいでくれると考えるのかもしれない。コンビニを舞台に坦々と綴られる7人の物語は、しかし、ひとつとして穏やかなものはない。やくざに惚れられたしっかりものの治子、お互いに好きだから分かれた照代と厚志、ヒモの栄三から離れられない克子。皆、生があふれているが、文体は穏やかで、それゆえ、現実感がなく、あの世のことの様でもある。 堀の力は気づかなかった心の傷にも効くようで、読後はさわやか。
がんばらない、の力: ★★☆(一歩引くことが可能にする力もあるのだなぁ)
年寄りはえらい: ★★☆ (老人小説ではない、が、老成した読後感)