2009年4月20日月曜日

日系中国工場 作業員観察記

製造工場の中国法人での生産部長の経験を綴ったもの。
登場人物は(仮名)と断っているが、どれも実話なのだろう。筆者は事実の語り部に徹し、従業員の気質、就業態度から日常生活、思考パターンまでを、感情を交えず抑えた筆致で記述する。
一人っ子政策がもたらす多くの無戸籍者、コネや地縁の横行、貧しい地方の生活、ばらつきの大きい教育レベル、同じ社内での給与や待遇の大きな差。筆者は工場でのトラブルの遠因がこうした社会システムにあるとして、中国の現状をまず理解しろと言う。その上で、従業員への情報の提供、きちんとした説明、基本からの教育とルールの定着を行えと説く。どれもが腑に落ちることばかりである。
現地駐在の管理者の心得集としての価値あり。実際の実務ではもっと実際に即したノウハウがいるだろうが、、、
懐かしい深圳: ★★★ (毎週のように出張していた。すごい勢いで発展していたが、生産工場や寮は、びっくりするような汚さだった。この本の通りである)
限られた情報の持つ怖さ: ★★☆ (情報を握ることは権力を握ることだ。しかし、今の世の中、情報を秘匿し、情報流通をコントロールすることは難しい。しかし可能な国があることが示唆されている)